レザー産業の実態、そして次世代のエコレザー



こんにちは。

RICCI EVERYDAY The Hill(代官山直営店舗)メンバーです。

近頃、冬の鋭い空気が和らいで日も少しずつのびてきましたね!先日焦ってコートを着るのを忘れて出掛けてしまったのですが、あまり寒さを感じず、むしろ身軽に1日を過ごすことができました!

私は毎年冬になると、いつまでニットを着ずに過ごせるか、コートに手を出さずにいられるかに挑戦しているので寒さに強いのかもしれません。笑 
みなさんは決して真似しないでください!笑

さて、今回はレザー産業の実態と次世代のエコレザーについて迫りたいと思います!

1. 革製品の環境負荷と健康被害
2. エコレザーについて
 2.1 環境に配慮して作られた本革
 2.2 動物性を使わないヴィーガンレザー
 2.3 リサイクルレザー
 


1. 革製品の環境負担と健康被害
高級製品というイメージが強い革製品ですが、レザーがどのように生産されているかご存知ですか?

レザーの生産には大量の水と「なめし」という工程で多量の化学薬品が使用されています。Water Footprint Networkのレポートによると、レザー1kgあたり17,000リットルもの水が使用されています。

使用後の化学薬品を多く含んだ水は、きちんと浄化されずに排水されていることも多く、産地では数多くの健康被害も報告されています。

2014年、フォトジャーナリストのショーンギャラガーさんが発表した'The Toxic Price of Leather'にてその実態がよく描かれています。

場所はインド北部カンプール地方、インド最大のレザー製品産地のひとつです。2013年にはレザー製品の総輸出額は37億ドルにまで成長しています。

その一方で、工場で排水される水のうち、きちんと処理されているものはわずか20%
そしてクロミウム、ヒ素、鉛などの化学薬品が高濃度含まれた汚染水が、毎日5,000万リットルカンプール工場からガンジス河へと流れています。

この水質と大気汚染により、カンプール工場で働く人のみならず、その地方の住民にまで、皮膚病、肺炎、喘息や精神障害など甚大な影響をもたらしています。

代償は健康被害に止まりません。
カンプール地方の土地はガンジス河の汚染された水を吸い、その土地で栽培されていたバラはもう生産できなくなってしまいました。

多くの犠牲を払って生産された革製品のうち、95%が欧米諸国へ輸出されています。インド政府もいまや大きな収入源となった革製品産業の規制には踏み出せずにいます。

またHuman Right Watchによると、バングラデシュのハザーリバーグの工場でも同じような健康被害が見られ、こちらでは児童労働や女性の賃金も問題視されています。より弱い立場にある子供や女性は通常業務に加えて、男性が行う仕事も追加で、しかも男性より低い賃金で任されているそうです。

このようにレザー産業は、地球に対しても人間に対しても到底持続可能であるとは言えません。しかし、欧米諸国をはじめとした先進国への輸出がインドやバングラデシュの財政の支えの一つなっていることも事実であり、今すぐにこのような工場の労働環境を見直すことは難しいのかもしれません。

2. エコレザーについて
そんなレザー産業の実態を問題視して生まれたのがエコレザーです。エコレザーという言葉を聞いて何を思い浮かべますか?

近年はサステナブルな環境作りの一環として注目を集めていますが、まだ明確な基準は定められていないようです。今回は大きく3つのカテゴリーに分けてご紹介したいと思います!

2.1 環境に配慮して作られた本革
日本では2006年にNPO法人日本皮革技術協会と一般社団法人 日本タンナーズ協会が日本エコレザー基準(JES)を発表しました。以下をエコレザーの基準として定めています。

・天然皮革であること
・発がん性染料を使用していないこと
・有害化学物質の検査をしていること (ホルムアルデヒド、重金属、PCP、禁止アゾ染料)
・臭気が基準値以下
・きちんと管理された工場で作られた革 (排水、廃棄物が適正に管理された工場で製造されていること)
・染色摩擦堅ろう度(色落ちのしにくさ)が基準値以上

そして基準をクリアした革製品は日本エコレザー基準認定ラベルの使用ができます。

2.2 動物性の素材を使わないヴィーガンレザー
ヴィーガンレザーには化学繊維が原料のものと天然繊維を用いて作られた革の類似品があります。こちらは動物愛護の観点からも注目を集めています。

ハイブランドもヴィーガンレザーを続々と取り入れています。ステラマッカートニーは創業以来ベジタリアンブランドとして、レザーはもちろん、ファーや羽毛など動物性の素材を一切使わない製品作りを続けています。
2013年よりナッパ風素材という化学繊維でありながら生産に必要な石油量を抑えられるレザーを使用しています。また、環境負荷削減のためにバッグのコーティングにも50%以上が再生可能な天然資源を利用しています。ラグジュアリーブランドとして、持続可能かつ動物実験を行わない新たなモノ作りの在り方を発信しています。

天然素材が原料のレザーとして、現在はリンゴの皮、パイナップルの葉、サボテンやキノコなど様々な素材を利用したヴィーガンレザーが開発されています。

以前のコラムでファッション産業のサステナブルな取り組みとして、リンゴの皮からできたレザーのご紹介をしました。詳しくはこちらをご覧ください。
ファッション業界のサステナブルな取り組み


2.3 リサイクルレザー
そして最後にご紹介するのが、食肉の副産物として出た皮を再利用したものです。

ウガンダ社会では「ものを余すところなく使う」精神のもと、食肉の副産物として出たレザーや骨、角などをアクセサリーやサンダルなどに、牛糞は肥料や家の壁の補強剤に、などいただいた命を最大限に活かすという習慣があります。以下のバッグの持ち手にはカウホーンが使用されています。


(キコイ・カウホーン・バッグ)


この「ものを余すところなく使う」という習慣は、ものに恵まれていない環境だからこそ生まれた発想なのではないでしょうか。
たとえば、日本でアクセサリーを作るためのパーツが欲しくなったらまず手芸道具屋を思い浮かべるのではないでしょうか。ものに溢れている世界では、「
じゃあ牛の骨を使ってみよう!」という考えにはなかなかならないはず。

ウガンダでは、空きビンを再利用してグラスを作ったり、使わなくなったブリキがアートに使用されたりと、使えるものを最大限再利用することが珍しくないそうです。

このように、様々な観点から次世代のレザーが生まれています。
サステナビリティ、動物愛護、そして人権などを考えるとどれも完璧ではありません。現在畜産農業は世界の温室効果ガス排出量の14.5%から18%の責任があると言われていますが、合成代替品を化学繊維に頼れば、それはそれで環境に負担がかかります。
そもそも世界に流通している本革製品のすべてが食肉の副産物であるのか、という議論さえあります。

私たち消費者にできることは、その製品が誰によって、どのような素材で、どのように作られているのかを確認して、納得できるモノを選ぶことなのではないでしょうか。

寒さ我慢生活というお話からだいぶシリアスな話題になりましたが(笑)少しでもご興味を持っていただけたら幸いです。また次回のサステナブルアクションfor everyoneもお楽しみに!


<出典>

https://waterfootprint.org/media/downloads/Hoekstra-2010-TheEnvironmentalist_01March_Issue93_2.pdf

https://vimeo.com/88261827

https://www.hrw.org/ja/news/2012/10/09/247717

https://ecoleather.jlia.or.jp/kijun/index.html

https://www.stellamccartney.com/experience/jp/sustainability/themes/materials-and-innovation/vegetarian-leather/

 

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